使い古したチェーンがあります。
表面だけ乾拭きして、切ってみました。内側は真っ黒に汚れています。
以前寿命を迎えたチェーンを分解して観察したことがあります(詳細はこちら)。
チェーンの何処がどの様に摩耗するのか、(個人的には)興味深かったのですが、更にと言うか、改めてと言うか、判ったことがあります。
「チェーンのリンク部分やローラーの汚れは簡単には落とせない。」
パーツクリーナーを2,3回くぐらせた程度では、完全に汚れを除去することは出来ません。
より汚れが落ちるチェーンの洗浄方法は何か、(たくさんある中の)今回3つの方法を試して検証してみます。
方法は以下の通り。
- パーツクリーナー。ホームセンターで買える安価なものを使用。使い方は非常に簡単だが、完全に汚れを除去するのは厳しいことは確認済み。比較対象として試す。
- 中性洗剤。これも非常に安価。ただし水で洗い流さなければならない。ちなみにシマノは、この洗浄方法を推奨している(勿論シマノ製チェーンの場合)。
- ディグリーザー。600ml、2千円程の物を選んだ。自転車専用だし、洗浄力は一番期待できそう。ただしこれも最後に水で流さないといけない。
始めます。
1番パーツクリーナー。
チェーン全体に4回掛けました。
拭き取ります。
2番、中性洗剤。全体に吹き付けます。
これは主にレンジ周りの掃除に使うスプレー式のものです。
1番パーツクリーナー。
チェーン全体に4回掛けました。
拭き取ります。
シマノ製チェーンの取り扱い説明書には、この方法でのチェーン洗浄が指示されています。 強力なケミカルはチェーンのコーティングを剥がしてしまう恐れがあるそうです。 本当かどうかは知りません。 |
これは主にレンジ周りの掃除に使うスプレー式のものです。
液がいきわたる様に全体を揉み、5分程漬けておきます。
洗浄剤を残さないように、しっかり水洗いします。
水気を拭き取ります。
3番、ディグリーザー。
少量をお皿にとって、刷毛で塗って全体に浸透させます。
これも5分放置した後、水洗い、拭き取りをします。
3種の洗浄が終わりました。
外見はどれも綺麗ですが、問題は内側です。
切りました。結構微妙な差です。
2番中性洗剤と3番ディグリーザーは甲乙つけ難いですね。
汚れが最も残っているのは1番のパーツクリーナーでしょうか。
インナープレートの黒染みは「汚れ」と言うより、「焼き付き」です。 |
プレートをこじってローラーを外しました。
1番のパーツクリーナーが最も汚れが残っていますね。
2番中性洗剤も少し残っていました。
ディグリーザーの浸透力のお陰か、3番はほぼ汚れが残っていません。自転車用だけのことはありますね。
今回使用したディグリーザーはFinishline Citrus Bike Chain Degreaser。 あまり環境に良くなさそうです。 |
やはりディグリーザーの洗浄力が最も高そうですね。
シマノ推奨の中性洗剤も健闘していますね。
コストパフォーマンスは500円でお釣りがくる中性洗剤が高いように思えます。
ただ、ディグリーザーもごく少量で済むので、1缶でかなり長持ちしそうです。
個人的にネックに感じるのは、両者水洗が必須になることです。
自転車にしょっちゅう水を掛けるのは、どうも気が進みません。
シマノ純正のチェーンオイル。ウェットタイプです。 安価ですし200キロぐらいは十分性能を維持してくれます。 特に水気をはじく「水置換」機能は謳われていません。 |
2と3番は拭いたとはいえ、水気がチェーンに残っているでしょう。
速めに注油したほうが良いでしょが、水置換機能のない普通のオイルでも防錆出来るのか、試してみます。
それぞれ半分ほど切って、オイルを注します。
オイル有と無で分けて保管しておきます。
2週間ぐらい置いておきましょう。
やく2週間経ちました。
またチェーンを切って観察しましょう。
「オイル無し」「パーツクリーナー」。
錆は見られません。
水を掛けていないし、古いオイルが残っているので、それが防錆の役目をしているようです。
「オイル無し」「中性洗剤」。
何カ所か切ってみましたが、錆は確認できませんでした。
改めて見ると、パーツクリーナー程ではありませんが、少しオイルが残っています。
「オイル無し」「ディグリーザー」。
こちらは完全に脱脂されていてカサカサです。
一見錆はないようですが・・・。
ほんの少しだけ錆が浮いているのを見つけました。
このチェーンは室内で保管していました。
保管環境が良ければ、たとえ水を掛けても、乾いた布等でしっかり水気を拭き取れば、あまり錆の心配はしなくて良いようです。
実際のチェーンの整備では、洗浄後すぐにオイルを塗布するのが一般的です。
次はオイルを注したチェーンの2週間後の状態を見ましょう。
「オイル有」「パーツクリーナー」。
勿論錆はないです。
「オイル有」「中性洗剤」。
錆無し。
「オイル有」「ディグリーザー」。
錆は見つけられませんでした。
多少水気が残っていても、普通のオイルで防錆できそうです。
検証は以上です。
今回の結果がすべてのチェーンやケミカルに当て嵌まるものでは決してないでしょう。
沢山の製品がありますから、すべての組み合わせを試すことは到底無理です。
さてチェーン洗浄、この3パターンの中で「モアベター」はどれでしょう?
「簡便さ」か「チェーンのダメージの軽減」か「洗浄力」か、どれも一長一短あって結論は出せないですね。
それでも無理に結論付けるなら、3つを併用して行くのが良いのかなと思います。
例えば、日常的には「パーツクリーナー」で簡単に清掃を済ませ、1000キロ以上走ったら、チェーンを外して「ディグリーザー」で洗浄するのも良いかなと思います。
もし「フッ素コート」など施されたチェーンをお使いなら、強力なケミカルは避けて「中性洗剤」にしておけば無難でしょう。
そもそもですが、ここまで徹底してチェーンを洗浄しても、(まめに注油さえしていれば)実走で違いを体感することは出来ないでしょう。
なんか、ちゃぶ台返しみたいですが(笑)、この検証はあくまでチェーンの摩耗を極力防ぐ方法を考えるためのものです。
だから手間とお金が掛りすぎるのは考え物です。チェーンの買い替えが一番楽で安上がりじゃ意味がないですよね。
自転車整備は「手段」であって、「目的」ではないです。
変な「沼」に嵌らず、良く整備された自転車で走りたいものです。
ではまた。
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